埼玉県西部を流れる入間川。飯能市に源を発し、入間市、狭山市を経て川越市で荒川に合流するこの川は、流域の住民にとって身近な存在であると同時に、古代から人々の生活と深く関わってきた歴史を持っています。
一体、入間川の最も古い歴史の記録とはどのようなものなのでしょうか。
地質時代、そして旧石器時代へ
入間川の歴史を語る上で、まず注目すべきは地質時代の記録です。狭山市笹井から入間市にかけての入間川流域では、約250万年前の地層が露出しており、そこからアケボノゾウ(Stegodon aurorae)の化石や足跡化石群が発見されている。これは、はるか昔、この地に入間川が流れ、そこにゾウが生息していたことを示す貴重な証拠です。
笹井化石林調査団の発掘調査
1975年に笹井地区で行われた発掘調査によりアケボノゾウの化石が発見されました。
場所は笹井ダムの上流左岸にある御嶽神社の南100mほどのところにあるエリアです。
アケボノゾウの特徴
- 日本固有種: アケボノゾウは、約250万年前から70万年前にかけて日本列島に生息していた古代ゾウです。大陸から渡ってきたミエゾウが日本の環境に適応して小型化したと考えられており、日本列島固有の種として進化を遂げました。
- 体格: 肩までの高さは約2.5メートルと、現生のインドゾウよりも一回り小さかったと推定されています。
- 臼歯: アケボノゾウの臼歯は、他のステゴドン類と比べて畝の数(咬頭の数)が少なく、柔らかい植物を食べていたと考えられています。
- 生息環境: 化石の発見状況から、アケボノゾウは森林や草原、湿地帯など、様々な環境に適応していたと考えられています。入間川流域も、当時は豊かな自然が広がり、アケボノゾウの格好の生息地となっていたのでしょう。
また、入間川流域では旧石器時代の石器も発見されており、古くからこの地で人類が活動していたことが分かっています。旧石器時代の人々は、入間川を水源とし、狩猟採集生活を営んでいたと考えられます。